Yuki Yamamoto
山本 雄基

無数の円、小さい円、大きい円、さまざまな円が、上や下、右や左に並べられ、山本雄基の作品を埋め尽くしている。かなり大きなサイズの作品もある山本の絵画には、そういった色とりどりの円がある独特の奥行きをみせて重ねられている。透明や不透明の塗料が何回も重ねられてできた、十層にも及ぶその表面にヤスリがかけられ、加工され、最後にクリアワニスで仕上げられる。そうやって制作された表面は、平面でありながら、3次元の空間であるかのようなイリュージョンをつくりだしている。山本のこうした手間のかかる画法は、無限に広がる効果を生みだしている。どの絵も、より大きな絵から切り取られた部分のようであり、そしてその大きな絵もまた、さらに大きな絵の一部を成すかのようだ。

「置き換える」とかつて山本は言ったことがある。「自分の感情を抽象的な絵に置き換えているんです」、と。だが、どのような感情が抽象化されているのだろうか。その答えを求めるには、英語の「サラウンディングsurroundings)」という言葉がヒントとなるのではないだろうか。ドイツ語の「Umkreis(周囲)」という言葉が「Kreis(円)」を含んでいるように、英語のサラウンドも、円いという意味の「ラウンド」を含み、サラウンディングとは、周囲、つまり、ある主体の周りを囲むものである。それらの、個の周りを囲むさまざまな円たちの違いや強度、円どうしの遠さや近さや重なりに関して、山本は感覚を研ぎ澄ませてきたのだ。それは、抽象化されて円という形であらわされる個人、物体、空間そして時間についての感受性である。また、その円たちは、泡や大気のように、絶えず漂い動いているようだ。円たちの状態は常に変化し続けている。浮かんで、互いに接触しあい、散り散りになり、時には静止し、また再び動き出す。

(翻訳: 竹内仁奈子)

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